「オルカンなら安心」は本当か?バックテストで検証するACWIの意外な弱点

はじめに:なぜこの記事を書くのか NISA口座でオルカン(eMAXIS Slim全世界株式)を積み立てている方にとって、この記事はあまり気持ちの良い内容ではないかもしれません。 筆者はオルカンという商品自体を否定するつもりはありません。低コストで世界中の株式に投資できる優れた商品であることは間違いありません。 ただし、**「世界に分散しているから安心」「長期で積み立てれば必ず報われる」**という思い込みについては、一度立ち止まって、データで確認してみる価値があると考えています。 この記事では、オルカンが連動を目指しているMSCI ACWI(全世界株式指数)のパフォーマンスを、S&P 500と比較する形でバックテストし、2つの重要な事実を明らかにします。 検証① 長期リターン:ACWIはS&P 500に一度も勝てていない まず、最も基本的な比較からはじめましょう。MSCI ACWI指数とS&P 500指数の年次リターンを並べてみます。 以下は、iShares MSCI ACWI ETF(ティッカー:ACWI)の年次リターンと、同時期のS&P 500のリターンを比較したものです(Yahoo Finance等の公開データに基づく)。 年 ACWI S&P 500 差 2010 +12.8% +15.1% S&P +2.3 2011 −7.9% +2.1% S&P +10.0 2012 +16.8% +16.0% ACWI +0.8 2013 +22.4% +32.4% S&P +10.0 2014 +3.8% +13.7% S&P +9.9 2015 −2.2% +1.4% S&P +3.6 2016 +8.4% +12.0% S&P +3.6 2017 +24.4% +21.8% ACWI +2.6 2018 −9.1% −4.4% S&P +4.7 2019 +26.6% +31.5% S&P +4.9 2020 +16.3% +18.4% S&P +2.1 2021 +18.7% +28.7% S&P +10.0 2022 −18.4% −18.1% S&P +0.3 2023 +22.3% +26.3% S&P +4.0 2024 +17.5% +25.0% S&P +7.5 2025 +22.4% +25.0%* S&P +2.6 *(2025年のS&P 500は概算値) ...

2026年2月14日 · 2 分 · 玉露 (Gyokuro)

「貯蓄から投資へ」は本当に起きている:2,700万人が動き出した日本の変化

はじめに:「投資なんて怖い」と言っていた日本人が動いた 日本人は投資が嫌いだ——そう言われてきました。 家計の金融資産のうち、現金・預金の比率は50%超。アメリカの13%、ユーロ圏の34%と比べて突出して高い。「投資は損する」「株はギャンブル」という意識が根強く、「貯蓄から投資へ」というスローガンは20年以上前から掲げられてきたものの、実態はほとんど変わりませんでした。 しかし、2024年に風向きが変わりました。 金融庁の最新データによれば、2025年6月末時点でNISA口座数は約2,696万口座に達しています。新NISAがスタートした2024年1月以降、わずか1年半で約570万口座が新たに開設されました。 累計買付額は63兆円を超え、政府が掲げた目標(2027年末までに56兆円)をすでに2年前倒しで達成しています。 「貯蓄から投資へ」は、もはやスローガンではなく、実際に起きている構造変化です。 数字で見る変化の全体像 具体的なデータを確認しましょう。 NISA口座の爆発的増加 時点 NISA口座数 累計買付額 2023年12月末(新NISA前) 約2,125万 約35.2兆円 2024年12月末 約2,558万 約52.4兆円 2025年6月末 約2,696万 約63.1兆円 政府目標(2027年末) 3,400万 56兆円(達成済み) ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、2024年は全ての年代でNISA口座数が増加し、特に20代以下の伸びが際立っています。20代から60代まで、NISA口座の保有率は20%を超えました。 実際に「使っている」人が急増 口座を開いただけでなく、実際にお金を投じた人も大幅に増えています。2024年に実際に買付があったNISA口座は1,650万口座で、前年の1,269万口座から380万口座も増加しました。 さらに注目すべきは、売却が極めて少なかったという事実です。つみたて投資枠での売却額はわずか1,813億円にとどまり、買付額4.97兆円の3.6%に過ぎません。新NISAの制度恒久化と投資期間の無期限化が、「買ったら持ち続ける」という行動を後押ししています。 家計の金融資産構成が変化 日本銀行の資金循環統計によれば、2024年末時点の家計金融資産は2,239兆円で過去最大を更新しました。その中で株式等の比率は**19.4%**と、2023年末の17.7%から上昇しています。 わずか1年で1.7ポイントの上昇。小さく見えるかもしれませんが、2,239兆円の1.7%は約38兆円に相当します。日本の家計から株式市場に向かう資金の規模感が、いかに大きいかがわかります。 なぜ今、日本人は投資を始めたのか この変化には、いくつかの構造的な理由があります。 ① 新NISA制度の圧倒的なインパクト 2024年1月にスタートした新NISAは、旧制度と比較して大幅に使いやすくなりました。 非課税期間が無期限に(旧NISA:一般5年、つみたて20年) 年間投資枠が360万円に拡大(旧つみたてNISA:40万円) 生涯投資枠1,800万円が新設 つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能に 特に「非課税期間が無期限」という変更は、心理的に大きな影響を与えました。「いつか非課税期間が終わる」という焦りがなくなったことで、長期投資のハードルが一気に下がったのです。 ② インフレの実感 前回の記事で詳しく解説した通り、日本のインフレは定着しつつあります。消費者物価は2%以上の上昇が45ヶ月連続で続いています。 「預金に入れておけばお金の価値は減らない」という時代は終わりました。 スーパーで食品の値段が上がり、外食費も上がり、電気代も上がる。その一方で、銀行預金の金利はほぼゼロ。この状況が続けば、「何か手を打たなければ」という危機感を持つ人が増えるのは自然なことです。 ③ 情報環境の変化 YouTube、SNS、ブログなどで投資に関する情報が爆発的に増えました。以前は「証券会社の窓口に行く」というハードルがありましたが、今はスマートフォンで5分あれば口座が開設でき、100円から投資を始められます。 特に20代〜30代の若い世代にとって、投資はもはや「特別なこと」ではなく、「やって当たり前のこと」になりつつあります。 この資金シフトが日本株にとって意味すること ここからが、このブログの読者にとって最も重要なポイントです。 ① 国内からの「買い手」が構造的に増えている 日本株市場には、大きく分けて3種類の投資家がいます。 外国人投資家:短期〜中期の売買の主役。資金量は大きいが、出入りが激しい 機関投資家(年金、保険会社など):長期の安定した買い手だが、リバランス時に売り手にもなる 個人投資家:長年は「逆張り」(株が下がると買い、上がると売る)が主流だった 新NISAの普及により、個人投資家が「毎月コツコツ買い続ける」という新しい買い手層として存在感を増しています。つみたて投資枠を使って毎月一定額を自動的に買い付ける投資家は、株価が上がっても下がっても買い続けます。 これは市場にとって非常に重要な「安定した買い需要」です。 ② ただし、お金の多くは海外に流れている ここで一つ、見逃せない事実があります。 新NISAで最も人気のある投資信託は、圧倒的にオルカン(全世界株式)とS&P 500です。つまり、日本の家計から投資に向かったお金の大半は、日本株ではなく海外株式に流れているのが現状です。 これは皮肉な状況です。日本人が「貯蓄から投資へ」動いた結果、その投資資金が海外に流出し、円安をさらに助長する構図になっています。 ③ だからこそ「日本株への回帰」に大きな余地がある しかし、裏を返せば、これは日本株にとって巨大なアップサイドの可能性を意味します。 ...

2026年2月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

NISAでオルカンを持つ人が見落としている為替リスク

「分散しているから安心」の落とし穴 NISAでオルカン(eMAXIS Slim全世界株式)を積み立てている方は多いと思います。「世界中に分散投資しているから安心」——そう考えている方も少なくないでしょう。 でも、一つ大切な問いかけをさせてください。 その資産の通貨構成を確認したことはありますか? オルカンの構成比率を見ると、約63.9%が米国株です(2025年11月末時点)。つまり、資産の6割以上がドル建てで運用されています。さらに、残りの部分もユーロやポンドなどの外貨建てが大半を占めており、実は**円建ての資産(日本株)はわずか4.9%**にすぎません。 つまり、オルカンを持っているということは、資産の約95%が外貨建てということです。 「分散」されているのは株式の銘柄や地域であって、通貨リスクについてはほとんど分散されていない——これが、多くの個人投資家が気づいていない重要なポイントです。 為替がリターンに与える影響は、想像以上に大きい 具体的な数字で考えてみましょう。 仮に、オルカンの基準価額がドルベースで年間10%上昇したとします。一見、良い年に見えますね。でも、同じ期間にドル円が155円から130円に円高が進んだ場合、どうなるでしょうか。 ドルベースのリターン:+10% 為替の変動:155円→130円(約16%の円高) 円建てのリターン:約−8% 株価は上がっているのに、円建てではマイナスになってしまいます。 これは極端な例ではありません。実際に2025年前半、まさにこれに近いことが起きました。米国株の軟調さに円高が重なり、オルカンの基準価額は一時16%以上下落しています。ドルベースでの下落幅以上に、円建てでのダメージが大きくなったのです。 「長期で持てば為替は平準化される」は本当か? 為替リスクを指摘すると、よく返ってくる反論があります。 「長期投資なら為替の影響は平準化される。気にしなくていい。」 この考え方は、ある意味では正しいです。20年、30年の超長期で見れば、為替の上下は均されていく傾向はあります。 しかし、歴史を振り返ると、5年から10年という単位で一方向に為替が動き続けた局面は、決して珍しくありません。 いくつかの例を挙げてみましょう。 1985年〜1995年:プラザ合意をきっかけに、ドル円は240円台から79円台へ。約10年間で60%以上の円高が進行しました。この間にドル建て資産を保有していた日本人投資家は、株価が上がっていても円建てでは大幅なマイナスを経験しています。 2007年〜2011年:リーマン・ショック前の124円台から、東日本大震災後の2011年10月には史上最安値の75円台まで円高が進行。わずか4年間で約40%の円高です。 2021年〜2024年:逆に、日米金利差の拡大を背景に110円台から一時161円台まで大幅な円安が進行。この期間にオルカンを保有していた方は、円安による「下駄」を履いた状態でリターンが底上げされていました。 ここが重要なポイントです。過去数年のオルカンの好調なリターンには、かなりの部分で「円安のブースト」が含まれているのです。もし今後、円高に転じた場合、同じブーストが逆方向に働きます。 2026年以降、円高に向かう可能性は? では、今後の為替はどう動くのでしょうか。もちろん為替の予測は誰にとっても難しいことですが、いくつかの構造的な変化が起きつつあります。 ① 米国の利下げサイクル トランプ大統領が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ氏は、最近の発言で利下げを支持する姿勢を明確にしています。米国が利下げサイクルに入れば、日米金利差は縮小し、円高圧力が高まります。 ② トランプ政権のドル安志向 SBI証券のレポートでも指摘されていますが、トランプ政権は貿易赤字削減と国内産業保護のため、ドル安誘導政策を志向する可能性があります。これは直接的に円高要因となり得ます。 ③ 日銀の利上げ余地 日本銀行は緩やかながら利上げの方向にあります。高市政権のもとで急激な引き締めは考えにくいものの、政策金利が少しでも上がれば、金利差縮小→円高の方向に作用します。 これらの要因が重なれば、中期的に円高が進行する可能性は十分にあります。 シミュレーション:円高で何が起きるか もう少し具体的に見てみましょう。 今、NISAでオルカンを300万円保有しているとします。ドルベースでファンドの価値が年5%ずつ成長した場合、為替レートの違いでリターンがどう変わるかを比較してみます。 3年後のシミュレーション(ドルベース年率+5%の場合): 為替シナリオ 3年後の円建て評価額 リターン 155円のまま(横ばい) 約347万円 +15.8% 155円→140円(約10%円高) 約314万円 +4.5% 155円→125円(約19%円高) 約280万円 −6.7% 155円→110円(約29%円高) 約246万円 −18.0% ドルベースでは3年間で15.8%成長しているのに、為替次第ではマイナスになる可能性があることがわかります。 「為替ヘッジあり」のファンドを選ぶ手もありますが、ヘッジコスト(現在は日米金利差分で年4〜5%程度)がかかるため、リターンをかなり圧迫します。万能な解決策とは言えません。 では、どうすればいいのか 為替リスクを完全にゼロにすることは、海外資産に投資する限り不可能です。それでも、いくつかのことは考えられます。 ① ポートフォリオの中で日本株の比率を見直す 最もシンプルな対策です。日本株であれば為替リスクがありません。前回の記事でもお伝えしましたが、過去5年のTOPIXのリターンはS&P 500やNASDAQを上回っています。「日本株はリターンが低い」という先入観は、もう過去のものかもしれません。 ② 為替が「高い」ときに一括投資を避ける 円安が大幅に進んでいる局面(つまりドルが「高い」局面)で大きな一括投資をすると、その後の円高でダメージを受けやすくなります。積立投資(ドルコスト平均法)を基本にしつつ、一括投資のタイミングには注意を払うことが大切です。 ③ 為替リスクを「意識する」だけでも価値がある ...

2026年2月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

ケビン・ウォーシュとは何者か:新FRB議長が日本の投資家に与える影響

はじめに:FRB議長の人事は、あなたのNISAに影響する 2026年1月30日、トランプ大統領は次期FRB(米連邦準備理事会)議長にケビン・ウォーシュ氏を指名しました。現議長のジェローム・パウエル氏の任期は5月に満了し、上院の承認を経てウォーシュ氏が後任に就く見通しです。 「FRBの議長人事なんて、自分の投資には関係ない」と思った方もいるかもしれません。 でも実は、FRB議長が誰であるかは、NISAでオルカンやS&P 500を保有している日本の投資家にとって、非常に大きな意味を持ちます。なぜなら、FRBの金利政策はドル円の為替レートに直結し、それがドル建て資産の円換算リターンを左右するからです。 この記事では、ウォーシュ氏がどんな人物なのか、彼のもとでFRBの金融政策がどう変わりうるのか、そしてそれが日本の投資家にとって何を意味するのかを、できるだけわかりやすく解説します。 ケビン・ウォーシュの経歴 まず、基本的な経歴を押さえておきましょう。 年齢:55歳 学歴:スタンフォード大学卒業、ハーバード大学ロースクール修了 職歴:モルガン・スタンレーの投資銀行部門でM&Aを担当。その後、ジョージ・W・ブッシュ政権でホワイトハウスの経済顧問を務める FRB理事(2006〜2011年):35歳で就任し、史上最年少のFRB理事に。リーマン・ショック時にはバーナンキ議長の側近として危機対応にあたり、緊急融資プログラムの設計に関わった 現在:スタンフォード大学フーバー研究所のフェロー。また、著名ヘッジファンドマネージャーのスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィスにも勤務 注目すべきは、ウォーシュ氏の義父がロナルド・ローダー氏であることです。エスティ・ローダーの創業家一族で、トランプ大統領とはペンシルバニア大学ウォートン校の同窓生。長年にわたる友人・側近であり、共和党の大口献金者としても知られています。 この家族関係から、ウォーシュ氏がトランプ政権と対立的な姿勢を取る可能性は低いとの見方が一般的です。 タカ派からハト派へ:ウォーシュの「変節」 ウォーシュ氏を理解する上で最も重要なのは、金融政策に対するスタンスが大きく変化しているという点です。 かつてのウォーシュ:筋金入りのタカ派 FRB理事時代(2006〜2011年)のウォーシュ氏は、インフレを強く警戒する「タカ派」として知られていました。 2008年のリーマン・ショック直後、多くの経済学者が大規模な景気刺激策を求める中、ウォーシュ氏は依然としてインフレリスクを主要な懸念事項として挙げていました。CNNの報道によれば、2008年6月のFOMC会合で「インフレリスクが経済にとって最も大きなリスクだ」と発言しています。 その後、FRBが大量の国債購入(量子緩和、QE)を拡大したことに反対し、2011年にFRB理事を辞任しました。FRBのバランスシートが「肥大化」していると批判し、「FRBにおけるレジームチェンジ(体制変革)」を訴えてきました。 今のウォーシュ:利下げを支持 しかし、最近のウォーシュ氏は明らかに方向転換しています。 2025年7月のCNBCのインタビューでは「利下げは正しいバランスに戻すためのプロセスの出発点だ」と発言。同年11月のウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿では、「FRBはインフレの原因が経済の成長や賃金上昇にあるという教条を捨てるべきだ」と主張しました。 この転向の論拠はAI(人工知能)による生産性向上です。ウォーシュ氏は、AIがもたらす生産性の飛躍的な向上がデフレ圧力として作用するため、従来の枠組みよりも低い金利が適切だと考えています。「生産性が年1%上昇すれば、一世代のうちに生活水準は倍になる」と述べています。 この「変節」をどう見るか、市場関係者の間でも意見は分かれています。 エバーコアISIのクリシュナ・グハ氏は「タカ派としての評判があり、独立性があると見なされているからこそ、他の候補者よりもFOMCのメンバーを説得して利下げに持ち込む力がある」と評価しています。 一方で、ルネサンス・マクロ・リサーチは「ウォーシュのキャリア全体を通じて、彼はタカ派だった。今のハト派転向は都合によるものだ」と指摘し、「大統領は騙されるリスクがある」と警告しています。 ウォーシュ就任で金利はどうなるか では、実際にウォーシュ氏がFRB議長になった場合、金利はどう動くのでしょうか。 現在のFF金利(フェデラル・ファンド金利)は3.5〜3.75%です。主要な予測を整理しましょう。 予測機関 2026年の利下げ見通し ウェルズ・ファーゴ 年後半に0.25%×2回の利下げ。年末で3.00%付近 ブルッキングス研究所(ロビン・ブルックス氏) 6月以降に合計1.00%の利下げ。年末で2.5〜2.75% JPモルガン 据え置き継続の可能性。ウォーシュでも大幅利下げは困難 外為先物市場 年内約0.4%の利下げを織り込み ここで重要な点を押さえておきましょう。 FRB議長は一人で金利を決められるわけではありません。 金利を決定するFOMC(連邦公開市場委員会)は12人の投票権を持つメンバーで構成されており、議長はあくまでその中のリーダーです。外交問題評議会(CFR)のレポートが指摘するように、直近の1月のFOMC会合では、12人中10人が金利据え置きを支持し、利下げを求めたのは2人だけでした。 つまり、ウォーシュ氏がいくら利下げしたくても、FOMCの多数派を説得できなければ金利は動かないのです。 ただし、中期的に見れば、利下げの方向性はほぼ確実と言えます。問題はそのペースとタイミングです。 日本の投資家にとっての意味 ここからが、このブログの読者にとって最も大切な部分です。 ① ドル円への影響:円高圧力 米国の利下げが進めば、日米金利差が縮小し、円高ドル安の方向に力が働きます。 さらに、トランプ政権自体がドル安を志向しているという指摘もあります。ウォーシュ氏の義父であるローダー氏は、トランプ大統領のグリーンランド買収構想のきっかけを作った人物としても知られており、政権との関係の深さが伺えます。 円高が進めば、NISAでドル建て資産(オルカン、S&P 500 ETFなど)を保有する投資家は、以前の記事で詳しくお伝えした通り、為替差損のリスクにさらされます。 ② バランスシート縮小の「副作用」 ウォーシュ氏はFRBのバランスシート縮小(保有する国債等の削減)を強く支持しています。Fox Businessのインタビューでは「印刷機の稼働を少し減らし、バランスシートを縮小すれば、大幅に低い金利が実現できる」と述べています。 しかし、ここには矛盾があります。バランスシートを縮小すれば、長期金利には上昇圧力がかかります。つまり、短期金利(FF金利)は下げても、住宅ローンなどに影響する長期金利は必ずしも下がらない可能性があるのです。 JPモルガンのフェローリ氏はこの点について「バランスシートの話は専門的に聞こえるが、住宅ローン金利への影響は現実的だ」と警告しています。 ③ 日本株にとっては追い風 一方、日本株の投資家にとっては、ウォーシュ氏の就任はポジティブな材料です。 米国の利下げ→円高が進めば、相対的に円建て資産である日本株の魅力が高まります。海外投資家から見れば、円高は日本株の割安感を解消する方向に作用しますし、日本経済のファンダメンタルズ(前回の記事で触れたガバナンス改革、インフレ定着、高市政権の積極財政)が維持されていれば、日本株への資金流入はさらに加速する可能性があります。 まとめ:ウォーシュの「本当の姿」はまだわからない ウォーシュ氏については、率直に言って、不確実性が大きいです。 タカ派なのかハト派なのか。トランプ大統領の言いなりになるのか、独立性を保つのか。AIによるデフレ論は本物の信念なのか、議長指名を得るための方便だったのか。 CNNの記事のタイトルが象徴的です:「もしウォーシュがFRB議長に就任したら、どちらのウォーシュが現れるのか?」 ただし、一つだけ確実に言えることがあります。 ...

2026年2月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

なぜ今、日本株なのか:データが示すオルカン一択の盲点

はじめに 「NISAでオルカンを積み立てておけば大丈夫」 最近、こうしたアドバイスをよく見かけるようになりました。SNSやYouTubeでも、まるで正解のように語られています。 でも、本当にそれだけで十分なのでしょうか? 本記事では、少し違った角度から投資を考えてみたいと思います。結論を先にお伝えすると、筆者は2026年以降、日本株がグローバル指数を中長期的に上回る可能性が高いと考えています。 その理由を、データ、マクロ環境、制度改革、政治環境の4つに分けて、できるだけわかりやすくお話しします。 1. まず、データを見てみましょう 下のチャートは、過去5年間の主要な株価指数を比較したものです(スタート地点を100として揃えています)。 ご覧の通り、TOPIXは約200に達しており、S&P 500やNASDAQ、ドイツのDAX、上海総合指数のいずれよりも高いリターンを記録しています。 意外に思われた方も多いのではないでしょうか。 それもそのはずです。日本の投資系メディアでは「米国株が最強」「オルカンで世界に分散すれば安心」という論調が圧倒的に多く、日本株の好調さはあまり話題になっていません。 ここで一つ、大切なポイントがあります。オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)の中身を見ると、構成比率の約60%が米国株です。つまり、「世界中に分散しているつもり」でも、実際にはかなりの部分を米国に集中投資していることになります。 そして、その米国株が過去5年でTOPIXに負けている——これは、多くの方が気づいていない大切な事実です。 2. 新FRB議長と為替リスク:NISAの盲点 次に、これからのマクロ環境について考えてみましょう。 2026年1月30日、トランプ大統領は次期FRB(米連邦準備理事会)議長にケビン・ウォーシュ氏を指名しました。ウォーシュ氏は元FRB理事(2006〜2011年)で、リーマン・ショック時に当時のバーナンキ議長のもとで危機対応にあたった経験を持つ人物です。モルガン・スタンレーの投資銀行部門出身で、現在はスタンフォード大学フーバー研究所のフェローを務めています。 注目すべき点がいくつかあります。 まず、ウォーシュ氏の義父はロナルド・ローダー氏——エスティ・ローダーの創業家の一族であり、共和党の大口献金者として知られています。ローダー氏はトランプ大統領とペンシルバニア大学ウォートン校の同窓で、長年にわたる友人・側近とされています。この家族関係から、ウォーシュ氏がトランプ政権と対立的な姿勢を取る可能性は低いとの見方が市場関係者の間で広がっています。 さらに重要なのは、ウォーシュ氏自身の金融政策に対するスタンスの変化です。かつてはインフレを警戒するタカ派として知られていましたが、最近は利下げを支持する発言を繰り返しています。2025年7月のCNBCのインタビューでは「利下げは正しいバランスに戻すためのプロセスの出発点だ」と述べ、ウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿では、AIによる生産性向上がデフレ圧力をもたらすと指摘しました。 こうした流れを踏まえると、米国が利下げサイクルに入る可能性は相当程度高まっていると考えるのが自然でしょう。 利下げが進むと、日米の金利差が縮小し、為替は円高ドル安の方向に動きやすくなります。 ここで気をつけたいのが、NISAで海外株式のファンドを持っている場合の影響です。オルカンなどのグローバル株式ファンドは、ドルなどの外貨建てで運用されています。円高が進むと、たとえファンドの価値がドルベースで横ばいだったとしても、円に換算した時のリターンは目減りしてしまいます。 過去5年でもすでに米国株はTOPIXに劣後しています。そこにさらに円高が重なると、差はもっと広がるかもしれません。 意外なことに、多くのNISA解説ブログやYouTubeチャンネルでは、この為替リスクについてあまり詳しく触れていません。「長期で持てば為替の影響は平準化される」という意見もありますが、5年、10年といった単位で円高が続いた時期は、過去に何度もあります。 為替のリスクは、やはり頭の片隅に入れておいた方が安心です。 3. 日本企業が変わり始めています 3つ目にお伝えしたいのは、日本企業そのものの変化です。 東京証券取引所は、プライム市場に上場する企業に対して、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている状態の改善を求める要請を出しました。簡単に言うと、「会社の価値をもっと高める努力をしてください」というメッセージです。 これに加えて、アクティビスト(物言う株主)の活動も活発になっています。海外の有名なファンドだけでなく、国内の大手機関投資家も、スチュワードシップ・コードに基づいて企業に対して「もっと株主に利益を還元してください」と積極的に働きかけるようになりました。 その結果、配当金の増額や自社株買いが急速に広がっています。しかも、その伸びは企業の利益成長を上回るペースで進んでいます。 正直に言えば、こうした動きが日本企業の経営の質そのものを根本から変えたかどうかは、まだわかりません。しかし、少なくとも確実に言えることがあります。それは、企業の意識が変わったということです。株主還元に対する姿勢は明らかに前向きになっており、この流れが後退する可能性は低いと考えています。 むしろ、東証の要請やコーポレートガバナンス・コードといった制度的な枠組みが整備されている以上、企業が「株主を意識しなくてよかった時代」に戻ることは難しいでしょう。経営の本質が変わったかはともかく、株主還元の改善トレンドは今後も続く——その蓋然性は十分に高いと思います。 投資家にとって重要なのは、この変化が配当利回りの向上や自社株買いによる一株あたり利益(EPS)の押し上げを通じて、株価の下支え要因になるという点です。 4. 高市政権の「責任ある積極財政」 最後に、政治環境について触れておきましょう。 2026年2月8日の衆院選で、高市早苗首相率いる自民党は316議席を獲得し、戦後初めて単独で衆院の3分の2以上を占める歴史的な圧勝を収めました。中曽根政権の300議席(1986年)、小泉政権の296議席(2005年)を上回る記録的な数字です。 この結果が意味するのは、政権基盤の圧倒的な安定です。高市政権は参院で否決された法案を衆院で再可決する力を持ち、政策の実行力は大幅に強化されました。 注目すべきは、高市首相が掲げる**「責任ある積極財政」**という経済政策の基本方針です。これは、行き過ぎた緊縮財政から転換し、積極的な財政支出によって経済成長を促す路線を意味しています。具体的には以下の施策が打ち出されています。 物価高対策と家計支援:電気・ガス代やガソリン代の負担軽減、ガソリン税の旧暫定税率の廃止、所得税の基礎控除引き上げ 成長投資:AI・半導体、造船、量子技術、宇宙、海洋資源などの重点分野に大規模投資を展開 2025年度補正予算:財政支出21.3兆円の経済対策を閣議決定。「積極財政により国力を強くする」と明言 金融政策については、高市首相は政府と日銀の連携を重視する姿勢を取っています。第一生命経済研究所のレポートによれば、需要超過の状態を維持することで供給力の拡大を促す「高圧経済政策」を志向していると分析されています。極端な日銀への圧力はかけにくいとしながらも、日銀の利上げペースに対してはブレーキがかかりやすい環境と言えます。 株式市場にとってのポイントは以下の3つです。 第一に、政権の安定性。衆院で圧倒的多数を確保したことで、政策の継続性と予測可能性が大幅に高まりました。これは海外投資家が日本株を評価する際の重要なプラス材料です。 第二に、財政出動の規模。成長分野への大規模な政府投資は、関連企業の収益を押し上げる可能性があります。 第三に、金融緩和的な環境の維持。利上げのペースが緩やかにとどまることで、企業の資金調達コストが抑えられ、株式市場にとっては追い風になります。 高市首相自身も「為替変動にびくともしない日本をつくる」と発言しており、国内投資の強化による内需主導の成長路線を明確にしています。 まとめ:日本株のことも、少し考えてみませんか もちろん、分散投資が大切であることに変わりはありません。一つの国や地域に集中しすぎるのはリスクがあります。 ただ、「オルカンだけ買えば安心」と思い込んでしまうのは、少しもったいないかもしれません。 過去5年のパフォーマンスデータ、新FRB議長のもとでの米国利下げと円高リスク、日本企業の株主還元の加速、そして高市政権の積極財政——こうした要素を踏まえると、ポートフォリオの中で日本株の比率を見直してみる価値は十分にあると思います。 このブログでは、今後もこうした視点から日本株に関する情報をお届けしていきます。少しでもみなさまの投資の参考になれば幸いです。 ※本記事は特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資に関する最終的なご判断は、ご自身の責任でお願いいたします。

2026年2月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

円安バブルの終わり:あなたのNISAの「含み益」は本物か?

はじめに:NISA口座の含み益、中身を確認していますか? 2024年1月に新NISAがスタートして以来、多くの方がオルカンやS&P 500の投資信託を積み立ててきたと思います。口座を開くと、嬉しいことに含み益が出ている方も多いのではないでしょうか。 でも、ここで一つ質問です。 その含み益のうち、「株価の上昇」によるものはどのくらいで、「円安」によるものはどのくらいか、把握していますか? この記事では、2021年から2024年にかけての大幅な円安が、ドル建て資産のリターンをどれだけ底上げしてきたかを確認し、その「円安ボーナス」が逆転したときに何が起きるかを考えます。 2021〜2024年:歴史的な円安の3年間 ドル円相場の動きを振り返りましょう。 時期 ドル円レート 2021年1月 約103円 2022年10月 約151円(32年ぶりの円安) 2024年7月 約161円(37年半ぶりの円安) わずか3年半で、ドル円は103円から161円へ。約56%の円安が進行しました。 これは何を意味するのでしょうか。仮にこの期間中、S&P 500がドルベースで1ドルも動かなかったとしても、円建てで見ると56%の利益が出ていることになります。 つまり、NISAでドル建て資産を持っていた人は、株価が上がらなくても、円安だけで大幅な含み益を得ていたのです。 含み益の「分解」をしてみよう 実際には株価も上がっていたので、リターンはもっと大きく見えます。ここで、2021年1月から2024年末までのS&P 500の円建てリターンを、株価要因と為替要因に分解してみましょう。 S&P 500(2021年1月→2024年12月、概算): ドルベースのリターン:約+45% 円安の効果(103円→156円):約+51% 円建ての合計リターン:約+120% つまり、円建てリターン120%のうち、半分以上が円安によるものです。 オルカンも同様の構造です。資産の約95%が外貨建てであるため、円安の恩恵をほぼフルに受けています。 NISA口座を見て「倍になった!」と喜んでいる方は、その利益の半分が為替の「下駄」であることを理解しておく必要があります。 円安は「ボーナス」だが、永遠には続かない 為替には必ずサイクルがあります。以前の記事で詳しく見た通り、ドル円は歴史的に5〜10年の単位で大きなトレンドが転換してきました。 1985〜1995年:240円→79円(約10年間の円高トレンド) 1995〜1998年:79円→147円(約3年間の円安トレンド) 2007〜2011年:124円→75円(約4年間の円高トレンド) 2012〜2024年:75円→161円(約12年間の円安トレンド) 2012年から始まったアベノミクス以降の円安トレンドは、すでに12年以上続いています。これは歴史的に見ても非常に長い周期です。 そして今、トレンド転換を示唆する要因がいくつも揃いつつあります。 円高に向かう3つの力 ① 米国の利下げサイクル ケビン・ウォーシュ新FRB議長のもとで、2026年後半には利下げが見込まれています。米国の金利が下がれば、日米金利差が縮小し、ドルの魅力が低下します。これは直接的な円高要因です。 ② トランプ政権のドル安志向 トランプ大統領は繰り返し「ドルは高すぎる」という立場を示しています。貿易赤字の削減と国内製造業の保護には、通貨安が政策的に望ましいからです。 ③ 日銀の利上げ 日銀はすでに政策金利を0.5%まで引き上げており、今後も緩やかな利上げが予想されています。日本の金利が上がれば、相対的に円の魅力が増し、円高圧力となります。 シミュレーション:円高が来たらNISAの含み益はどうなる ここが最も重要な部分です。 NISAでS&P 500の投資信託を200万円保有しており、現在の含み益が80万円(評価額280万円)だとします。このうち株価上昇分が40万円、円安分が40万円と仮定します。 ドル円が155円から以下の水準に動いた場合、どうなるでしょうか。 ドル円 為替の影響 含み益の変化 残る含み益 155円(現状) — — 80万円 140円(約10%円高) 約−28万円 為替益が消失 約52万円 125円(約19%円高) 約−53万円 大幅減少 約27万円 110円(約29%円高) 約−81万円 ほぼゼロ 約−1万円 ドル円が110円まで戻れば、80万円の含み益はほぼ消えます。 ...

2026年2月14日 · 1 分 · 玉露 (Gyokuro)

個人投資家がプロに勝てる唯一のポイント

はじめに:プロは本当に強いのか 「機関投資家にはかなわない」——多くの個人投資家がそう感じています。 ヘッジファンドにはPhDを持つクオンツアナリストがいる。年金基金には数十人の運用チームがある。外資系証券会社にはリアルタイムで世界中の情報が集まる端末がある。 筆者は30年間、日本株の運用の現場でプロの投資家たちと仕事をしてきました。彼らの資金力、情報量、分析能力が個人投資家を圧倒していることは事実です。 しかし、30年間の経験から確信していることが一つあります。 個人投資家がプロに対して持っている、たった一つの、しかし決定的な優位性があります。 それは「時間」です。 プロの投資家が抱える「時間の制約」 これは、業界の外にいる方にはなかなか見えない構造です。 四半期という呪縛 機関投資家の多くは、四半期ごとにパフォーマンスを評価されます。 ヘッジファンドのファンドマネージャーは、3ヶ月ごとに運用成績を顧客に報告しなければなりません。2四半期連続でベンチマークを下回れば、解約の通知が届きます。年金基金の運用担当者も、理事会に対して定期的な説明義務があります。 この仕組みが生む行動パターンは明確です。 「正しいと思っても、短期的に株価が下がるポジションは持てない」 たとえば、ある企業が3年後に大きく成長すると確信していても、今後6ヶ月間は業績が低迷する見通しであれば、プロのファンドマネージャーはその株を買うことをためらいます。なぜなら、6ヶ月後の評価で「なぜこんな株を持っているのか」と問い詰められるからです。 ベンチマークへの縛り 多くの機関投資家は、TOPIXやMSCI Japanといったベンチマーク(指標)に対する相対パフォーマンスで評価されます。 これが意味するのは、ベンチマークから大きく離れたポジションを取るリスクを避けるということです。ベンチマークに含まれる大型株を中心に保有し、独自の判断で小型株や不人気銘柄に大きく賭けることは、キャリアリスクを伴います。 「間違えても皆と同じなら許される。正しくても皆と違えば問題になる」——これがプロの世界の現実です。 資金規模の制約 大手の機関投資家は、運用する資金が大きすぎるがゆえに、小型株に投資できないという制約もあります。 時価総額が小さい企業に数百億円を投じれば、自分の買いで株価が急騰してしまいます。そして売るときには、自分の売りで暴落する。このため、多くの機関投資家は時価総額の大きい銘柄にしか投資できません。 個人投資家の「時間の自由」 ここで、個人投資家の状況を考えてみましょう。 あなたには、上司がいません。四半期報告もありません。ベンチマークに勝たなければクビになることもありません。 あなたが持っている最大の武器は、「いつ買って、いつ売るかを、完全に自分で決められる」という自由です。 これがなぜ決定的な優位性なのか。具体的に説明します。 ① 割安なタイミングで買える 株式市場では、定期的に暴落やパニックが起きます。リーマン・ショック、コロナ・ショック、2024年8月の日本株急落——いずれも、ファンダメンタルズ(企業の基礎的な価値)以上に株価が下がった局面でした。 こうした局面で、機関投資家の多くは「リスク管理」の名のもとにポジションを縮小します。顧客からの解約要請に対応するために、優良株まで売らなければならないケースもあります。 一方、個人投資家はパニックの最中に買うことができます。誰からも強制的に売らされることはなく、「良い企業が安くなったから買う」というシンプルな判断ができるのです。 ② 長期で保有できる ある企業が構造的な変化の恩恵を受けると判断したとき、個人投資家はそのポジションを3年でも5年でも持ち続けることができます。 機関投資家にとっての「長期」は、せいぜい1〜2年です。それ以上のスパンで結果が出なければ、ポジションを手仕舞いせざるを得ない圧力がかかります。 このブログでお伝えしてきたような日本株の構造変化——東証改革、インフレ定着、ガバナンス向上、高市政権の成長戦略——は、いずれも数年単位で効果が現れるテーマです。こうしたテーマから利益を得るのに最も適しているのは、時間の制約がない個人投資家です。 ③ 小型株にアクセスできる 時価総額が小さいがゆえに機関投資家が手を出せない企業の中に、実は大きな成長ポテンシャルを秘めた会社が眠っています。 PBR改善に真剣に取り組んでいる中小型株、ニッチな分野で世界シェアを持つ企業、アクティビストが注目し始めた地味な会社——これらは個人投資家だけがアクセスできる「宝の山」です。 「時間の自由」を活かすための3つの条件 ただし、この優位性を活かすには条件があります。 条件①:生活資金と投資資金を分ける 時間の自由を持つためには、投資に回しているお金が「すぐに必要なお金」ではないことが大前提です。 生活費に手をつけてしまうと、株価が下がったときに「損切りしなきゃ」と焦ることになります。これでは、個人投資家最大の武器を自ら手放すことになります。 NISAの枠組みの中で、余裕資金で投資をしている限り、あなたは「時間」という最強の武器を持ち続けられます。 条件②:自分なりの投資根拠を持つ 「SNSで話題だから」「有名な投資家が推していたから」——こうした理由で株を買うと、株価が下がったときに持ち続ける根拠がなくなります。 自分で調べ、自分で考え、自分なりの根拠を持って投資する。そうすれば、株価が下がったときに「自分の分析は間違っていたのか、それとも一時的な下落なのか」を冷静に判断できます。 このブログでは、マクロ経済の大きな流れと、日本株を取り巻く構造変化についてお伝えしてきました。こうした情報を自分の投資判断に組み込んでいただければ幸いです。 条件③:感情に振り回されない 株価が急落すると、人間は本能的に「逃げたい」と感じます。これは正常な反応です。しかし、この本能に従うと、多くの場合「安いところで売って、高くなってから買い戻す」という最悪のパターンに陥ります。 プロの投資家が四半期の評価に追われて冷静さを失う一方で、個人投資家は自分自身の感情さえコントロールできれば、冷静な判断ができる立場にあるのです。 プロが個人に嫉妬する瞬間 30年間この業界にいて、プロのファンドマネージャーが個人投資家を羨むのを何度も見てきました。 「あの株、3年前から目をつけていた。でも四半期の数字が悪くて持てなかった。今になって株価は3倍だ」 「小型株でいい会社を見つけた。でもうちのファンドサイズでは買えない」 「暴落の底で買いたかった。でも顧客が解約してきて、逆に売らなきゃいけなかった」 これらはすべて、筆者が実際に聞いた言葉です。 プロが持っていない「時間の自由」を、あなたは持っている。この事実を忘れないでください。 まとめ:あなたの最大の武器を使いこなす 個人投資家の最大の弱みは「情報量」と「分析力」だと思われがちです。しかし、情報はインターネットで民主化され、分析ツールも無料で使える時代になりました。情報格差は確実に縮まっています。 一方、個人投資家の最大の強みである**「時間の自由」は、制度的に機関投資家が絶対に得られないもの**です。 この優位性を活かすために必要なのは、余裕資金での投資、自分なりの根拠、そして感情のコントロール。この3つが揃えば、個人投資家はプロに勝てます。 日本株は今、数十年に一度の構造変化の入り口にあります。インフレの定着、企業ガバナンスの改善、政府の成長戦略、海外投資家の回帰——これらの変化が完全に株価に織り込まれるまでには、まだ時間がかかるでしょう。 その「時間」を味方にできるのは、あなたです。 ※本記事は特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資に関する最終的なご判断は、ご自身の責任でお願いいたします。 本ブログでは今後、日本株に関するより詳細なセクター分析や個別テーマの深掘りなど、さらに実践的なコンテンツを提供していく予定です。ぜひご注目ください。 ...

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